大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)48号 判決

原告が主張する審決取消事由の存否について検討する。

1 審決が相違点(1)として挙げる本願発明の構成について

成立に争いのない甲第三号証(手続補正書)、同第五号証(第一引用例)、同第六号証(第二引用例)によると、つぎの事実が認められる。

すなわち、第二引用例には、板紙の供給装置として、フレームを縦位置にして板紙を積み重ね、これを、その位置から次の搬送装置への繰出し姿勢位置までの範囲内、下り勾配になるまで傾倒できるように機台に枢支した繰出し装置が記載されている。一方、第一引用例の紙葉繰出し装置は、フレームが機台に固定され、紙葉が将棋倒しにならず、起立状態で搬送装置に供給されるように、適宜の角度で上り勾配に配置されているが、このような固定式フレームに代えて、第二引用例に示すような回動式、すなわち、フレームが縦位置から直角に近い鋭角の範囲で傾倒できるようなものにすることは、板紙の供給について、例えば、板紙の垂直方向での積み込みから、続いて、水平方向に近づいた角度をもつ次の搬送装置への送り出しという供給意図が決定されれば、それに応じ、当業者が容易に推考できる程度のことというに十分である。

原告は、第二引用例のものは段ボールシートを将棋倒し状にして搬送装置に送り出すものであるから、下り勾配の傾倒に限定されるのに対し、本願発明は段ボールシートのブロツクを将棋倒しにならないように搬送装置に送り出すことを目的とするものであるから、上り勾配に傾斜できるようにすることが必要であつて、その間に著しい作用効果の違いがあると主張する。しかしながら、板紙を将棋倒し状にするためには、フレームを下り勾配にし(第二引用例)、また、将棋倒し状にしないためには上り勾配にする(第一引用例)必要があるのは当然であり、しかも、第一引用例のものひいては本願発明のフレームの上り勾配は、第二引用例のものの回動式フレームが作動する傾倒角度の範囲内のことであるから、本願発明の効果は、第二引用例の回動式フレームの効果の範囲内において収められるものというほかはない。

そうすると、審決が相違点(1)として挙げる本願発明の構成について、第二引用例記載の技術事項に基づいて当業者が容易にしうる第一引用例の装置の構成の変更に止まるとした判断に誤りはない。

2 審決が相違点(2)として挙げる本願発明の構成について移送手段そのものとしての無端帯の駆動や停止に必要なスイツチ類及びそのスイツチ類の使用が慣用の手段であることは、原告の自認するところである。したがつてまた、これにより無端帯を適当な時期に一時的に駆動停止することは、右スイツチ類の操作として当然なことである。

そうすると、本願発明において、「シートをブロツクごと繰出し装置から搬送装置へ移送する際、一時的に無端帯の駆動を停止する間欠駆動機構を設けた」点に発明力の存在を認めることはできないものといわねばならない。

原告は、この点に関し、本願発明は単に無端帯を駆動、停止させるための機構を設けただけのものではなく、間欠駆動機構を本願発明の要旨のとおりの構成として一体不可分なものとすることによつて、段ボールシートをブロツクごと繰出し装置から搬送装置へ、簡単かつ能率的に、しかも、表裏交互となつているブロツクをその表裏を一定の方向に整え、カール状の癖を矯正させながら移し替えるという技術的課題を解決したものであると主張する。

しかしながら、前顕甲第三号証によれば、本願発明が供給、搬送の対象とする段ボールシートを、そのカール状の癖を矯正するために、ブロツクごとに表裏交互に積み込み、これを表裏を一定の方向に整えながら搬送装置に移し替えることは、本願発明を実施しようとする場合における当該装置について、たとえば人手等の稼働による作業を加えてする搬送手順を説明したものにすぎず、発明の詳細な説明のこの点の記載は、本願発明自体に更にある作業を加えてされることについてのものでこそあれ、本願発明の特許請求の範囲に規定された供給装置の構成そのものがもたらす作用効果に係るものではないことが認められる。

しかも、成立に争いのない乙第一号証ないし第七号証及び弁論の全趣旨によれば、段ボールシート、紙葉は、一般にその製造、加工工程によりカール状の癖が付くこと、そのカールした段ボールシート、紙葉をブロツクごとに表裏反対にして積み重ねることがカール状の癖を矯正する手段として有効であること及び段ボールシートのブロツクを表裏交互に積み重ね、これを搬送途中で表裏同じ向きに整えて移送する段ボールシートの供給装置は、いずれも、本願発明の出願当時、当業者にとつて周知の事項であることが認められる。

右のとおりであるから、結局、この点に関する審決の判断に誤りはないというべきである。

3 審決が相違点(3)として挙げる本願発明の構成について

前顕甲第三号証、同第五号証、同第六号証によれば、第一引用例のものと対比して、本願発明が供給、搬送の対象を、第一引用例のものが対象とする紙葉類中の段ボールシート又はそのブロツクに限定することにより、格別な作用効果を収めるべき具体的構成は、その発明の要旨とされているものとは認められない。

したがつて、審決がこの点に関し、本願発明をもつて、第一引用例のものの単なる用途の限定にすぎないとした判断に誤りはない。

そうすると、原告の主張はいずれも理由がなく、本件審決を違法としてその取消を求める本訴請求は、失当として棄却すべきものである。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

繰出し装置、搬送装置及びこれを支持する機台から成る段ボールシートの供給装置において、繰出し装置のフレームを縦位置から直角に近い鋭角の範囲内で傾倒できるよう機台に枢支し、傾倒した上記フレームの先端に接近した位置に上記搬送装置を設け、上記フレームに無端帯を設けると共に、その無端帯にキツカーを突設し、かつ、段ボールシートをブロツクごと繰出し装置から搬送装置へ移送する際、一時的に無端帯の駆動を停止する間欠駆動機構を設けたことを特徴とする段ボールシートの供給装置。

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